- 頭でっかちと終わらせれない症候群
- 手、指がうまくできればそれだけで生き生きしてくる
- 体のパーツを分けて見る、考える
- 「おかしい」と認識するのが第1段階。それを直すのが第2段階
- 学生のときだからこそ、本当にやりたいのであれば死ぬ覚悟で
- リファレンスの分析
※「アニメーションワークショップ(2013) 各週の内容」をすべて見るにはこちら
シンガポール在住のアニメーター小島淳嗣氏によって2013年に開催されたアニメーションワークショップの内容を許可を得てまとめています。
※茶色の文章はクラス中に言われたことではなく、編集時に追記したものです
■頭でっかちと終わらせれない症候群
期待してたほどまではいってない。
たかが30f前後のアニメーション。
Walk Cycle で何をみてほしかったか → Polish.
綺麗に整える、磨く工程を実際にやってほしかった。
それをするのに最適なのがWalk Cycle.
大半の人ができてない。
なぜできないのか。学生時代を振り返ると、ブレーキをかけてしまうことがよくあった。
なぜか?いろんな情報、アニメーションの知識が入ってきて、あれもこれもと頭でっかちになってしまうことがある。
「ここはこの方がいいんじゃないか」と考えてしまったり、
「自分のアイディアはダメなんじゃないか」とか「腕の動きはよくないんじゃないか」と変える作業になり、ポリッシュにたどり着かない。
終わらせれない症候群。
ブロッキング、アニメート(プライマリ)、ポリッシュという1本の流れがある。
その1本の工程を、自分が思ってるよりも何回も繰り返したほうが良い。
1週間以内に5回。つまり5つのバージョンができるくらいじゃないと。
アニメーションの段階でブロッキングに戻ったり、ずっとループしてしまう。
ポリッシュにたどり着かない。
終わらせるという自信もつかない。手数もこなせない。
とにかく終わらせる。
別にアイディアは別の時にやる。
ポリッシュ、ポリッシュ、ポリッシュ。
■提出した動画
動画は , キーもしくは . キーでコマ送りすることができます。
●WalkCycle(大畑)
造形がいただけないかな。
ゴツゴツしてる感じは出てるが、膝の凹み具合がきになる。
膝はもうちょっとなとかしてほしい。脚のストレートがでない。
他の人に比べて蹴りがしっかりできてる。もうちょっと後ろに残してもいいかな・・。
3f, 6fでももうちょっと後ろにいてもいいかな。
着地前のかかとの上がりがない。
キャラによってそうならない時もあるのでなんとも言えないが。
大方良い感じ。歩いてる感は出てる。
手も良い感じ。重さも伝わってきてる。
オーバーラップもできてる。手もずれてる、お腹もずれてる。
最後のステップの時に重さが欠けてる
11fになるまで、腰の高さはピーク。もしくはピークをキープ。
腰が落ちるのは膝が曲がる時。
腰が落ちるのは、地面についてから!1fとかならいいけど。
もうちょっと浮かせる。
足がビタンとなるときに腰を下げる。
重さが出るのでキャラクター性が出てくる。
Spacingにアラがないのでまとまってる感がでてる。いい点。
Polishとまではいかないが・・Spacingはぱっと見おかしく見えない。
Q. ただ「片手に重いものを持ってるガタイの良い人」になってるが?
頭でっかちの話にもつながるが、考えだしたらキリがない。
80%完成のアニメーションを量産。まずはメカニクスがしっかりできてから。
想像力を働かせるのはいいこと。
そればっかり考えてると終わらせれない症候群になったり、学生なのに頭でっかちになる。
Q. 右手の形は?
2次元的に見てShapeを無理矢理変えてしまうのも一つの手。
指のカーブをじっくり見てしまうが、カメラから見えてる形を2次元的に認識して、次のフレームで完全に変える。もっと伸ばすとか。
Shape単位で考えるのはどのパーツでも。
絵として考えるということ。
リファレンス。自分で好きなモノを集めればいい。
指の回転がどうとかよりも、形が2次元的にShapeが変わってるということを意識したら、より生き生きしてくる。ドツボにはまらない。
絵を作ってるという作業を忘れてはいけない。
どれだけカーブを綺麗にしても、どれだけめりこみ直しても、最終的な絵として意識。観客が見るのはそこだけ。
手、指は繊細。
難しいけど、うまくできればそれだけで生き生きしてくる。
●WalkCycle(太田さん)
太田さん) 1fずつ打っていった。
良くでたのか、悪くでたのか、ストップモーションっぽくなってる。
大田さんはアニメーションにかける時間が絶対的に少ないのかも。
カーブ、ポーズの取り方などでも苦戦してる感じ。
最終的にカーブをいじらなければいけないが、その前に3次元空間上でのポーズ。
手首を見たらSpacingのバラ付きが目立つ。
体のパーツを分けて考える事が必要かも。
体は体で見る。腕は腕で見る。
左手もガタついてる。完成とは程遠い。
Spacingが完成品にとっていかに大事かがよくわかると思う。
「おかしい」という認識があるのであれば、どうやってでもそれを直さなければいけない。
直さない限り、それはそのまま。誰も直してくれない。
気づけ無いのであればどうしようもないが、気付いたのであれば直さなければいけない。
頭でっかちになって、「ここを変えたらこっちが」とか「キャラ的にこういう気持ちが伝わらないのでは」とか考えてるのであればそれは忘れる。
Spacingとしておかしいところをまずなくさないといけない。
時間を掛けれず直せなかったのであれば、時間を費やすしかない。
5, 6 時間であればもっとよくなったかなぁ・・
直すところがピンポイントで見えてないとあれだけど。
言うべきかわからないが。一応言っておく。
学生のときだからこそ、本当にやりたいのであれば、死ぬ覚悟でやったほうが良い。
(後半に詳細を書きました)
●WalkCycle(東郷さん)
頭の落ちが早いか。30f~ 05f
あごを上げてディレイを入れるか。
カクン、カクン、がちょっと強すぎる。
右肘のSpacingがちょっとアグレッシブすぎるか。
それはそれでキビキビしてる感じも出てるが。
ヘッドフォン持ってる手の固定。コンピューターっぽさがなくなった。
説得力出てる。
リグはみんな使ってるから、そのまま使うと見たことあるものにしかならない。
+αで人間っぽいものになる。
頭が一番気になる!
●WalkCycle(栗木さん)
難しいね・・題材が題材なだけに。
重心の動きがぎこちない。
腰の部分が上下に動いたり、左右に揺れたり。一歩一歩踏みしめてる感じを見せるのがWalkCycleをうまく見せるポイントだが・・
アイディア的に出来ないのでむずかしい。
脚の踏んでる位置が直線的になってるのが良いかな。女っぽくなる。
下駄のカコン、という感じがでてない。
下駄とかかとが離れてる感じはいいよね。
実際うまく機能するかわからないけど言う。
地面にあたって、カツンと下ろす。スペーシングを急に止める。
接地の部分に注意して、これでもかというくらいに詰めてやったほうが
下駄の音が聞こえてくるようなアニメーションになってくるかなと。
指の傘を持つ感じは努力が垣間見える。
が、握り方がまだおかしい。しっかりできてない。中途半端。浮いてる感じになってる。
Specificity的にはいい。着眼点は良い。
手首が固い。指の動きは手首と連動する!
オフセットがないのでループ感がある。
左手のタイミングが、ステップとほぼ同じになってしまっているから。
左手は帯に固定するとか、着物らしい振る舞いが欲しい。
足のステップは女性らしくて良い。
全部のパーツが同時に動いて同時に止まってる感じがする。
傘を持ってる腕の固定感も気になる。固い。
かしこまった感じも出さなきゃいけないが、その中でも動かさないと。
CGっぽい感じがある以上、現実より誇張しないといけないかな。
World上を歩かせて、スムーズに動いたか?
1fでちょっと詰まってるような感じに見える。ちょっと蹴りを入れるか。
●WalkCycle(黒澤さん)
良くなった。ヤンキーっぽさが増してる。
ステップが軽いかな。キャラの重さを感じれない。
大畑くんと同じで、腰の下がるタイミングか・・。
接地する前に腰が落ち始めてる。その遅れがずっしり感に繋がる。
18f。もっと足後ろに残しておいていいかな。重心が後ろにあるので倒れそうになってる。
20fの足の平の角度、垂直くらいまではもってったほうがいいか。
上手にまとまってる。
直すメインは重さのところ。腰の遅らせを。
●全員に対して言っていたこと&他の参加者が言われていたこと
・Walk Cycleとして完成させたあとで、他の動きを足すことはプロダクションでよくやる。
ちょっとした仕草を入れる。
・Walk Cycleは360度どこから見てもSpacing等成立するように。
映像業界は画面で見えてるところだけで上手くいってればいいと言ったが、Walk Cycleは別。
ゲーム業界のアニメーションは全方向どこからでも。
・サイクルは背の高さが違うキャラを同じスピードで進めなきゃいけない。
誰かが遅れをとるようじゃダメ。
早い段階でワールドスペース上で歩かせ、歩幅を決めたりスピードを決めることも必要。
今回の課題としては別にいいんだけど。
・悪くはないが、明らかなSpacingの問題が有る。
Spacingのマッサージとよく言う。がくがくなってるのを直さなければいけない。
おかしいところを認識するのが第1段階。それを直すのが第2段階。
カクカクがなければ非常に良い。完成させる心意気を持っておいて欲しい。
・かかとがおかしい。
ちょっとしたアークになってるが・・
かかとのアークとして描いて欲しいのはこういうアーク。
ストレートの状態で、最後にくいっと空中に浮く感じ。
■学生のときだからこそ、本当にやりたいのであれば死ぬ覚悟で。
小島さん自身の話。学校自体が裕福な学校だった。
貧乏学生だったので、みんなが遊んでる時に遊べなかった。
人生の中で、ある一定の期間は1つのことにガッツリのめり込むことも必要。
今このワークショップでという話ではなく、今後の人生で、という話。
特に駆け出しのころは時間があるときにずっとMayaを触らないと。
プロは毎日8時間アニメーションして、周りの人の話も聞き、自分でも考えてる。
私生活もあるので四六時中というわけではないが・・。
今のままではそういう人達に追いつけない。
自分でももっと練習しないと。熱中して!
■リファレンスの分析
自分で撮る。大事!
色んなところで役に立つ。
昔、実際に鼻のArcをとってみた。
先生がArc,Arcいうけど・・直線じゃないか!
以外なところにArcがあったり、こんなところに直線が出るか、という発見もある。
やるとやらないでは全然違う!自分で演じてみる。
フィジカルの動きは想像だけではつけれなかったりする。
自分の体を動かして、Filmに撮ってみる。
使うかどうかは別。体を動かして、感じることが大事。
後で客観的に観て気づくことがある。使えるかどうかは別として。
リファレンスやってみて!友達にやってもらうのもあり。
通しではなくて、一部だけ何度も撮るのも有り。
フィジカルな動きは撮るほうが早い。
足のグッとなるタイミングやよろけてる感じは想像では難しい。
分析、分析、分析!
■次回までの課題
パントマイム。セリフ無しのアニメーション。
今までのことを全部噛み砕いで投影!
Staging, Spacing, Character, Specificity…
3週間は考えてるけど早ければ2週間か。
個人的にはミニマリズム、マイナス、マイナスな演技が好き。
体全身でもいいし、手首だけでもいいし。
好みで好きな課題を。
アイディアは自由だけど、一つ参考として学校の時の先輩の作品を紹介。
散々言ってきたspecificityとかよく見えると思う。
“ChessBored” (下記リンク先にいくつかアニメーションがアップされていて、その内の1つです)